クラウド・コンピューティングのディザスタ・リカバリ

クラウド・リカバリとは、エンタープライズ・ビジネスでデータと必要不可欠なアプリケーションを確実に保存し、簡単に利用可能にするための戦略のことです。

目次

ビジネスで成功するために必要なことの1つは、未来を見据えることです。例えば、新しい製品とサービスで売上高を増やし需要を喚起するために、ビジネス・トレンドとチャンスを予測することなどです。業務とインフラストラクチャへの潜在的な脅威に備えるのも、その1つです。

未知のことに備えがあるビジネス・オーナーは、障害が発生しても先手を打つことができます。障害には、火災、洪水、内戦などの自然発生的な出来事によるものや、データの消失によるサービス停止などがあります。データの消失は、ハッキング、ランサムウェア攻撃、または誤ってネットワークからアイテムを削除してしまう場合でも発生します。

障害によって、ビジネスまたはデータがオフラインの間に収益を失うため、財務に深刻な影響が及ぶ可能性があります。障害の復旧に時間がかかりすぎて、評判を落としてしまう可能性もあります。

ディザスタ・リカバリ戦略に大容量のストレージ・クラウドの使用を追加し、重要な情報をバックアップし、障害が発生した際にリカバリする方法について計画を作成しましょう。

ディザスタ・リカバリとは

どのような障害がいつ発生するかは予測できませんが、障害発生後に対処する計画を準備することはできます。

ディザスタ・リカバリ・プランでは、業務をどのように復元し、ビジネスに復帰するかについて要綱をまとめます。特に、このプランは重要な日々の業務の回復に必要な、一連の必要不可欠なデータまたはソフトウェアを保護するために作成されます。収益、売上高、またはカスタマー・サービスに深刻な影響を与える可能性のあるビジネスの構成要素の中断を最小限に抑えることが、目標になります。

ディザスタ・リカバリ・プランを作成する場合、多くの要因を考慮する必要があります。次のような質問が想定されます

  • 組織の規模はどれぐらいか壊滅的な事故が発生した場合に影響を受ける業務や社会的な任務、責任の規模はどれぐらいか
  • 従業員の勤務形態はリモートなのか、ひとつのオフィスでの勤務なのか、それとも複数のオフィスにまたがっているのか
  • ストレージのクラウド・サービスは、すでに利用しているのか
  • テープ、DVD、外付けハードディスク・ドライブなどの従来のバックアップ・メディアは信頼できるのか
  • 障害からリカバリする際に優先順位を付ける必要がある主要なハードウェアおよびソフトウェアはどれか

このような情報はすべて収集し、公式の計画に記載して、できるだけ早期にすべてをオンライン化することが可能です。

サービスとしてのクラウド・ディザスタ・リカバリ (DRaaS) とは

開始段階では、効果的なディザスタ・リカバリ・プランの作成をアウトソーシングすることもできます。

サードパーティのホスティング・オプションを使用して、共同で計画を作成すれば、障害が発生した際は、ホスティングが計画実行において一定の役割を果たします。これには、すべてのデータの構成、複製、必要に応じた適切な移動を確実に行うことが含まれます。

クラウドに保存されているデータは常に利用できるので、サービスとしてのディザスタ・リカバリ (DRaaS) ソリューションを使用すれば、どこからでも常にアクセスすることも可能になります。物理的にシステムを設置することが安全ではない、または設置場所がない場合、このソリューションは便利です。

バックアップとリカバリのクラウド・ソリューションによって、CommvaultVeeamなどのストレージと保護に特化したさまざまな企業と提携し、リカバリ・プラン全体を強化することが必要になる場合があります。このような機会に、会社のディザスタ・プランにさらに機能を追加します。

クラウドのディザスタ・リカバリと従来のディザスタ・リカバリ

この数年間でクラウドの選択肢が増え、料金が下がってきたため、多くの企業がクラウド・サービスの各種オプションを試すことができるようになりました。企業によって、クラウド・サービスで可能になる、理論上無制限なストレージ・オプションサービスを全データのバックアップのために利用する場合も、従来のディザスタ・リカバリ手法を依然として使用し、オンプレミス・データ・センターや自社管理のプライベート・クラウドで発生する可能性があるデータ消失に対応する計画を作成して、管理する場合もあります。会社の規模や拠点によって、どちらの場合も長所があります。

従来のディザスタ・リカバリとは

従来のディザスタ・リカバリとは、例えば、障害が発生したシステムの復元と修復を、多くの場合物理的なバックアップで実行することです。これにより、すべてが現地の管理下に置かれます。

この方法によるディザスタ・リカバリでは、会社のデータと関連する外部ハードウェアを拠点に物理的に集積します。会社の規模によりますが、この拠点の設備を建造するために資金とリソースを投資する必要があるかもしれません。また、この設備を継続的に保守、更新、管理するための投資が必要になります。概して、コストも時間もかかる手法です。

従来のディザスタ・リカバリの欠点とは

端的に言えば、時間とお金です。クラウドによるディザスタ・リカバリ(数秒で完了します)と比較すると、従来のディザスタ・リカバリではすべてのリロード、再起動、テストが完了するのに数時間かかる場合があります。リカバリ・プロセスの指示に必要な専門担当者が社内にいない場合もあります。バックアップ拠点または緊急オフサイト・リカバリ・センターを維持している場合は、電力や設置場所のコストがかかります。この場合、ある地域でより大規模な障害が発生すると、これらのセンターが影響を受けるリスクがあり、オンラインに復帰するのがさらに遅れることになります。

クラウド・コンピューティングでのディザスタ・リカバリの利点とは

クラウド・コンピューティングでバックアップを実行すると、ディザスタ・リカバリがかなりシンプルになります。このプロセスには、顧客のサーバーを複製した仮想マシンの作成が含まれます。これらの仮想マシンはオンラインに保たれ、定期的に更新されます。障害が発生した場合、必要なのはディザスタ・リカバリ・プランを開始して、データをサーバーおよびサービスに復元するプロセスを実行することだけです。

これにより、データ消失を最小限に抑え、業務をすばやく再開できます。ディザスタ・リカバリ・プランでは、重要項目の実行が完了するまで、優先順位の低い構成要素の復旧は後にする必要がある場合もありますが、最も重要なデータおよびサービスを最優先して、必要不可欠な業務を迅速に回復することが、最初にやるべきことです。

この方法では、特定の物理的な1つの場所だけからではなく、任意の場所からリカバリ・プロセスを開始できます。

ディザスタ・リカバリ・プランとは

ディザスタ・リカバリ・プランでは、システムを復旧する方法、クラウド・プロバイダに依頼するのか、自社でバックアップのロードを開始するのかについての要綱をまとめます。特定のタスクの実行を、どの部署が担当するかについても要綱をまとめます。

この計画は、会社が従うべき青写真となるもので、決定済みの事項や各種ベンダーとの関係について記載します。

複数の管理者が復旧方法について対立し、指針が存在しないような代替案は、混乱をまねく可能性があります。アカウントは、ベンダーによって再構築し設定することが必要になる可能性があります。場合によっては、追加コストが発生したり、スケジュールが不確実になることもあります。

ディザスタ・リカバリ・プランは、臨機応変なものです。つまり、安全マニュアルと同じように作成、保管するべきではありません。定期的に更新し(例えば、毎年)、最新のプロセスが復旧し、最新のITベンダーとパートナーがオンラインにもどるようにします。

計画のハード・コピーとデジタル・コピーを管理し、利用できるようにします。

ディザスタ・リカバリ・プランの作成方法

以下の手順で有効なディザスタ・リカバリ・プランを作成できます。

  • コンピュータ、サーバー、ライセンス、サブスクリプションなどのテクノロジー資産を洗い出す
  • セキュアなログインとパスワードなど、各種のクラウド・ロケーションにアクセスするためのプロセスのリストを作成する
  • 各種のタスクを担当する主要な従業員(役職と部署、名前は省略可能)のリストを作成する
  • セキュリティなど、各種パートナーの連絡先のリストを収集する
  • 障害が発生し、計画を実行してから特定の要件が満たされるまでの期限を推定して設定する
  • 計画を社内の主要メンバーに送り、詳細が正確であることを確認する。この主要メンバーには管理者だけでなく、現場のIT担当者、カスタマー・サービスのスタッフなど、データ取得を実行する担当者となる可能性のある人も含まれます。