ハードディスク・ドライブ:信頼できるAIのバックボーン
AIの透明性、拡張性、安全なデータ・ワークフローを実現します。
多くの業界やユースケースでAIの導入が盛んですが、AIを有効活用できるかどうかは、信頼性の高い出力生成にかかっています。信頼性の高いAIは、需要の高い価値あるビジネス資産となっています。
信頼できるAIを構築するには、データと出力の信頼性を確保する主要な要素が必要です。この記事では、信頼できるAIシステムを構築する上で、透明性、データ・リネージ、説明可能性、アカウンタビリティ、安全性が果たす役割について解説します。上記の各要素は、AIの成功に不可欠なデータ保全性と信頼性をサポートし、ハードディスク・ドライブはこれらのメリットを一貫して提供するために必要なストレージのバックボーンとなります。
信頼できるAIとは、信頼性の高い入力を使用し、信頼性の高い洞察を生み出すAIデータ・ワークフローを指します。信頼できるAIを構築するには、基盤となるデータが以下の基準を満たしている必要があります。
拡張性の高いストレージ・インフラストラクチャがあれば、それらを信頼できるAIの基盤にし、AIシステムで使用する膨大なデータを適切に管理、保存、保護できます。
AIプロセスには膨大な量のデータがかかわるため、効率的に管理するには堅牢性の高いインフラストラクチャが必要です。こうした膨大なデータセットを管理するために、AIワークロードをサポートするデータ・センターには、オブジェクト・ストアやデータ・レイクを実現する拡張性の高いストレージ・クラスタが設置されています。このインフラストラクチャが、AIのデータループ全体、つまり、未加工データの調達から将来使用するモデル出力の保存までを支えているのです。
そうした拡張性や効率性を欠くデータ・センターでは、AIの可能性を一部しか引き出せないでしょう。AI導入の成功には、膨大なデータセットを保存し検索する能力が極めて重要だからです。
AIに最適化しモダナイズしたアーキテクチャを実現するには、コンピューティング、ストレージ、ネットワークの各レイヤーをバランス良く統合する必要があります。データ・レイクとオブジェクト・ストアは、多くの場合、複数のストレージ層を利用しています。これによって、AI環境基盤を構成し、大規模ハイパフォーマンス・コンピューティングを可能にします。ストレージ・インフラストラクチャは、AIシステムが即時アクセスを必要とするデータとアーカイブ・データの両方にアクセスできるようにするために不可欠です。AI用に構築されたアーキテクチャは、大規模な拡張性を念頭に置いて設計されています。そうしたストレージ容量と性能のバランスが、AIシステムの効率的な運用や、需要に応じた拡張を左右することになります。
しかし、拡張性の高いアーキテクチャだけでは不十分です。信頼できるAIには、信頼性を実現する要素、すなわち透明性、データ・リネージ、説明可能性、アカウンタビリティ、安全性も必要です。これらの要素がAIワークフローの整合性をどのように支えているかを見てみましょう。
信頼できるAIでは、大規模な透明性が重要です。これによって、AIシステムが下した判断に対し理解、アクセス、再現、修正が可能であることを保証できるからです。たとえば、おすすめの映画がAIシステムで提案されるとしましょう。透明性が確保されていれば、自分の視聴履歴や嗜好などの明確なデータに基づく提案であることをユーザーが理解しやすくなります。
データ・センターでは、拡張性の高いストレージ・クラスタがAIデータのライフサイクルにおけるすべての意思決定ポイントの明確な記録を提供することで、透明性をサポートします。このようなインフラストラクチャがあれば、データの出どころから、処理、出力までを追跡して、アカウンタビリティをさらに確保できます。
透明性は、さまざまな業界で重要な役割を果たしています。以下に3つの例を挙げます。
そうした透明性の確保によって大きな責任を果たすには、データ、決定、モデル出力を明確にすることが重要です。
データ・リネージとは、AIプロセス全体を通してデータセットのソース(出どころ)と使用方法を特定する能力であり、モデルがどのように最終判断を下すかを理解するうえで極めて重要です。
たとえば、ヘルスケアAIアプリケーションのデータ・リネージでは、情報源を明確にしながら、診断に使用されたデータセットを追跡できます。
データ・リネージによりデータの入力から出力までの明確な記録を提供することで、組織はデータセットの出どころと使用を検証して、AIモデルが正確なデータを利用していることを確認できます。処理の各段階を通じてデータを追跡することで、データ・リネージはAIシステム全体を監査可能にし、規制遵守と内部のアカウンタビリティの両方をサポートします。ハードディスク・ドライブは、各変換を安全に保存することでデータ・リネージを容易にし、開発者がAIの意思決定プロセスの全容を明らかにする過去のデータ記録を確認できるようにします。
説明可能性により、AIの意思決定が理解可能であり、追跡および評価できるデータに基づいていることが保証されます。これは、AIの意思決定の根拠を理解することが人命や投資に影響を与える可能性があるヘルスケアや金融などのリスクの高い業界では特に重要です。チェックポイントを保持することで、ハードディスク・ドライブは開発者がモデル開発のさまざまな段階を振り返り、データ入力や構成の変更が結果にどのような影響を与えるかを評価できるようにします。このアプローチにより、AIシステムはより透明性が高くなり、理解しやすくなるため、信頼性と利便性が向上します。
AIにおけるアカウンタビリティにより、ステークホルダーはモデルの検査と検証を確実に行うことができます。チェックポイントとデータ・リネージにより、ハードディスク・ドライブはデータ入力から出力までのAI開発を文書化する監査証跡を提供し、組織はAIが生成した意思決定に影響を与えた要因を検証することができます。この監査証跡は、組織が規制基準を遵守し、信頼性が高く再現可能なプロセスに基づいてAIシステムが構築されていることをユーザーに保証するために役立ちます。アカウンタビリティにより、意思決定が下された特定のチェックポイントを正確に把握して、AIシステムのアクションに対する責任の所在を明確にすることができます。
安全性は、不正アクセスや改ざんからデータを保護することで、信頼できるAIを支えます。暗号化や保全性チェックを含む安全なストレージ・ソリューションにより、AIモデルでは改ざんされていない真正なデータが確実に利用されます。ハードディスク・ドライブは、データを安定した管理対象の環境で保存することで安全性をサポートし、組織による改ざんの防止を支援し、厳格な安全性規制の遵守を可能にします。AIプロセスのすべての段階でデータを保護することにより、企業はAIワークフローの整合性に対する信頼を維持することができます。
信頼できるAIの上記の要素を達成するためには、データ保全性、安全性、アカウンタビリティをサポートする堅牢なメカニズムが必要です。チェックポイントやガバナンス・ポリシーからハッシュや大容量ストレージ・システムに至るまで、このようなメカニズムによって、AIシステムは信頼性の高い意思決定に必要な高い基準を確実に満たすことできます。以下では、上記のメカニズムが信頼できるAIをどのように支えているかを解説します。
チェックポイント処理とは、AIモデルの学習中に、特定の短い間隔でAIモデルの状態を保存するプロセスです。AIモデルには、数分から数日かかる反復的なプロセスを通じて、大規模なデータセットを用いてトレーニングが行われます。
チェックポイントは、トレーニング中の多くのポイントにおける、モデルのその時点での状態(データ、パラメーター、設定)のスナップショットのような役割を果たします。1分から数分ごとにストレージ・デバイスに保存されるスナップショットにより、開発者はモデルの進行記録を保持することが可能になり、予期せぬ中断による貴重な学習の損失を避けることができます。
チェックポイントは、信頼できるAIを実現するために、複数の重要な役割を果たします。
電源の保護。チェックポイントは、システム障害、停電、クラッシュからトレーニング・ジョブを保護し、最初からやり直すことなく、最後に保存した状態からモデルのトレーニングを再開できるようにします。
モデルの改良と最適化。チェックポイントを保存することで、開発者は過去の状態を分析し、モデルのパラメータを微調整し、長期にわたってパフォーマンスを向上させることができます。
法令遵守と知的財産の保護。チェックポイントは、組織が法的枠組みを遵守し、独自の手法を保護するために役立つ透明性のある記録を提供します。
信頼の構築と透明性の確保。チェックポイントはモデルの状態を記録し、AIの意思決定を追跡可能かつ理解可能にすることで説明可能性をサポートします。
ガバナンス・ポリシーは、AIのライフサイクルを通じてデータを管理、保護、利用するための枠組みを確立します。ガバナンス・ポリシーにより、AIシステムは規制要件や社内基準を確実に遵守するようになり、データが倫理的かつ安全に扱われる環境が構築されます。ガバナンス・ポリシーは、アクセス制御、データ保存スケジュール、コンプライアンス手順を定義することで、AIワークフロー内の安全性とアカウンタビリティをサポートします。このような基準を設定することで、組織はAIシステムの透明性や信頼性を確保し、健全なデータ管理原則に基づいてAIシステムが構築されるように徹底することができます。
ハッシュ化は、データに固有のデジタル・フィンガープリントを作成することにより、データ・リネージを維持する上で重要な役割を果たします。このフィンガープリントによって、組織はAIプロセスのどの段階においても、データが変更または改ざんされていないことを確認することができます。データセットとチェックポイントをハッシュ化することで、AIシステムはデータ入力が常に一貫性を保ち、破損していないことを保証して、安全性を強化し、透明性を高めることができます。ハードディスク・ドライブにハッシュ化されたデータ記録を保存することで、組織はデータの真正性を確認し、AIワークフローへの信頼を維持することができます。
大容量ストレージ・システム、特にハードディスク・ドライブを活用したシステムは、信頼できるAIに欠かせない膨大なデータを保存し、管理するために基盤となる必要な容量を提供します。
ハードディスク・ドライブは拡張性とコスト効率の高いストレージを提供し、AIシステムが現在のデータとアーカイブされたデータの両方にアクセスできるようにします。このようなシステムは、アクセス可能な記録を維持することで透明性を、データを長期間保存することで説明可能性を、そしてデータ保存のための安定した環境を提供することで安全性をサポートします。
Mozaic 3+™技術を採用したSeagate Exos®シリーズ・ハードディスク・ドライブは、こうした特殊な要件に対応するために作られています。これにより、AIモデルの性能を高める未加工データセット、データ生成プロセスの詳細な記録、モデル・トレーニング中の反復チェックポイントなどを保存し、AI分析の結果を保持できます。
ハードディスク・ドライブは、そうした透明性を確保するうえで重要な役割を果たしています。なぜなら、AIモデルが活用する膨大なデータセットといった重要な情報が保存される場所だからです。こうしたデータには、長期保存用のネットワーク・ハードディスク・ドライブと即時アクセス用のSSDを組み合わせることで簡単にアクセスでき、これによって、AIライフサイクルのあらゆる判断ポイントを常に追跡することも可能です。
ハードディスク・ドライブによる綿密な情報管理は、規制遵守の維持、説明可能性の向上、モデルの改善、アカウンタビリティの強化に役立ちます。ライフサイクル全体のデータを管理できるため、明確で追跡可能な記録が可能であり、これらをレビューすることで規制やポリシーの遵守を確認できます。
データ量は、さまざまな分野で急増しており、ゲノム研究や医療用画像といった、ヘルスケアの分野では、毎年ペタバイト規模のデータが生成されています。センサーやコネクテッド・ガジェットなどのIoTデバイスや、ソーシャル・メディア上のユーザー生成コンテンツの急増は、このデータ氾濫の大きな要因となっています。
ハードディスク・ドライブは、費用対効果が高く、拡張性の高いストレージの選択肢として登場しました。大容量ストレージでありながら、1テラバイトあたりのコストが最も低い(フラッシュ・ストレージの6分の1)ため、データを長期的に保存する場合には最適な選択肢となります。ハードディスク・ドライブが、AI処理に使用する膨大な未加工データセットの保持や、AI分析結果の保存に最適なストレージとして選ばれている理由は、その点にあります。ハードディスク・ドライブは、入力と出力を長期にわたって確実に保存するだけでなく、計算量の多いトレーニング段階でのAIワークフローをサポートし、チェックポイントを追跡し、反復処理されるさまざまなコンテンツを保存します。
信頼できるAI実現への道のりは、透明性、データ・リネージ、説明可能性、アカウンタビリティ、安全性を確保できれば明らかになります。こうした要素を備えることで、データを単なる数値から、イノベーションへと変えることができます。
信頼できるAI実現への道のりは、透明性、データ・リネージ、説明可能性、アカウンタビリティ、安全性を確保できれば明らかになります。こうした要素を備えることで、データを単なる数値から、イノベーションへと変えることができます。
ハードディスク・ドライブは、未加工データの取得からチェックポイントの保持、分析結果の保存に至るAIデータ・ワークフロー全体を支えるものであり、AIモデルの検証、微調整、信頼性向上に長期にわたって重要な役割を果たします。ハードディスク・ドライブを活用してデータを長期保存すれば、過去に実行したトレーニングの再確認と結果の分析によってモデルを調整し、効率と精度を高めることができます。
AI導入がさまざまなセクターに拡大すると、データ・リネージの維持、規制基準への対応、利害関係者との明確なコミュニケーションなどが極めて重要になります。Seagateのエンジニアは、拡張性とコスト効率に優れたストレージ・ソリューションを提供し、そうした取り組みをサポートするハードディスク・ドライブを構築しました。これが、AI開発の現場で、信頼性が高く賢いシステムの構築という成果につながっています。